パンが苦手な園児でした。
幼稚園で出されるパンが食べられなくて、
残すと怒られるので、いつもパンを隠していました。
どこに……?
敷きクッションの下に!
お尻で圧縮しながら!
なので、座席のクッションの下に
毎日1枚ずつパンが重なって行きました。
それでも、誰も気がつかないし、何も言わない。
最高のやり過ごし方を覚えて、園児だった僕は有頂天でした。
しかし、このやり方は1週間くらいで破綻します。
クッションの下が、押しつぶされた食パンで
満杯になってしまったからです!
これは絶対怒られる……な。
そう直感した僕は、一つのアイデアを思いつきました。
「自分じゃない、誰かが仕組んだことにすれば、いい!」
このアイデアは「いける!」
僕は先生のところへ行き、こう言いました
「先生、誰かが僕の座布団の下にパンを入れた!」
(誰がこんなことをするんだ!僕はびっくりしている!先生、どうしよう?)
という感情を込めて、先生を見上げました。
訝しげな表情で僕の席まで行き、
椅子の上のクッションをめくると、
そこにはいく重にも重ねられ、押しつぶされた食パンが……
しかし、先生は何も言わず、パンを片付けてくれました。
怒ることもしませんでした。
「パンを残す時は、先生に要らないって言いなさい」
と、淋しそうな視線を投げられました。
「これは、いかんことをしてしまった!」
怒られなくてよかった(ホッ)という気持ちも大きかったけど、
瞬間的に「先生は全てお見通し」「嘘がバレてる」
「先生を悲しませた?」と感じたのです。
この時、園児らしい直感的、直線的な思考で
「正直に自分から話せば、怒られない」
「嘘はバレる」
ということを学んだ気がします。