中学も2年生になると「高校受験」が話題になってくる。
本を読むこと=ガリ勉くん
ぐらいのイメージを持っていた自分は
勉強することがカッコ悪いとさえ思っていた。
成績は可もなく不可もなく。全くもってフツー。
なんの面白みもないオール3生徒。
親も教育熱心でなく、特に危機感もなかった。
ただ、一人のおばさんとの出会いから
状況が変わり始めた。
それは隣町に住むフツーの主婦。
自宅で5~6人の子供に数学を教えていた。
和室で正座して、タンスの引き出しに
立てかけた板にB紙をかぶせた「白板」で授業をする。
決して怒らない、凛とした雰囲気のある、
品のいいおばさんだった。
噂ではスチュワーデスだったとか聞いたが……
定かではない。今もって謎のおばさん。
教え方がうまかった。
おばさんの塾に通うになってすぐに、
あんなに苦手意識のあった数学が、
スラスラと頭に入ってくるようになった。
「数学って、こういうことなの?」
「面白いじゃん!」
人生の中学生の2年生後半に差し掛かったところで、
初めて学習の楽しさを覚えた。
面白みのない数字の羅列が「クイズ」に変わって、
問題を解く楽しさを知った。
数学の成績がぐんぐん伸びた。
つられて他の科目も伸びた。
いつのまにか「ガリ勉くん」たちとも仲良くなった。
結局この勢いは受験まで続き、
希望だった岐阜高専に入学することができた。
あの、おばさんの塾との出会いがなかったら……
劣等感に苛まれつつあった中学生の自分は、これをきっかけに
それまでの自分像とは真逆なセルフイメージを獲得できた。
「勉強する自分」(笑)
いい教師との小さな出会いが、
人生を大きく転換させた出来事だった。